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退職防止の策としてのワーク・エンゲイジメント向上

シリーズ第3回 「部門の運営方針の明確化」

会社にとって、社員の離職は避けたい課題のひとつです。特に近年は、人材確保そのものが難しい時代。
採用にかけたコストや時間を無駄にしないためにも、いかにして「社員の定着」を図るかは、
経営の最優先課題ではないでしょうか。

そのための有効なアプローチが「ワーク・エンゲイジメントの向上」です。
ワーク・エンゲイジメントとは、社員が仕事に対して誇りとやりがいを持ち、熱意をもって取り組む心理状態のこと。
やる気や根性論ではなく、「自分の仕事が会社や社会にとって意味がある」と実感できる仕組みが整ってこそ、
エンゲイジメントは高まります。

では、どうすればその仕組みが作れるのでしょうか?
それを実現するポイントが、「部門の運営方針の明確化」です。

会社には必ず「ビジョン」や「経営方針」が存在します。
この全社方針が、社員1人ひとりの行動と直結している会社は強いものです。
しかし現実には、ビジョンが経営陣の頭の中にしかなく、現場まで届いていないケースが非常に多いのが実情です。
そんな状況であれば、各部門やチームごとに「自分たちの業務さえ回っていればOK」と考えがちです。
その結果、部門同士がバラバラに動き、部署ごとの最適化が優先されることで、全社としては非効率で、
顧客への価値提供がぶれてしまいます。

これでは、どんなに社員が頑張っても「自分の働きが会社の成長に貢献している実感」を得ることは難しく、
やがてモチベーションは下がります。
結果として、何か不満や転職のきっかけがあれば離職へとつながってしまいます。

こうした問題を防ぐためには、全社方針と各部門の運営方針、そして個人の業務目標を「一貫性のある形でつなぐ」必要があります。
この流れを、一般的には「カスケード」と呼びます。
組織の上から下へ、水が流れるように目標や方針が伝達されることで、全社員が同じ方向を向いて行動できるのです。

全社方針が示され、それを受けて部門単位で「自分たちは何をすべきか」を具体的に落とし込む。
さらに、その部門方針を受けて、個人の業務目標が設定される。
この流れが明確になれば、社員は「自分の仕事が会社の成長とどう結びついているか」を理解でき、
自分の役割に誇りを持って取り組むことができます。

つまり、「部門の運営方針の明確化」とは、単なるマネジメントのための文書作成ではありません。
社員が自分の存在意義を感じ、会社との一体感を持って働くための土台です。

社員が全社方針に沿って、自部門の役割を理解し、自信を持って仕事に取り組める組織は、自然とワーク・エンゲイジメントが
高まり、結果的に離職リスクは大幅に低下します。
逆に、これがないと「この会社で働く意味」を見いだせず、少しの不満や外的要因で退職に至る確率は高くなります。

ワーク・エンゲイジメントを高めたい。社員の定着率を上げたい。
そう願うのであれば、まずは「部門の運営方針の明確化」から着手してみてください。
全社方針→部門方針→個人目標、この一貫した流れが整えば、社員の心は会社と確実につながります。

その積み重ねが、強い組織づくりへの第一歩です。

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